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音楽劇 駆け込み訴え PV
演出ノート
私たちは幾重に衣を纏う
何か自分の外側に纏ったキャラクターを表現することに必死になる。
自分が何者であるかは、名刺に刷られた名前の、一段上に載っている接頭語が大体は修飾してしまう。
私たちはいくつもの衣をまとった『濡れ衣の被害者』である。同時に私たちもその身に纏う衣で人を識別する『濡れ衣の加害者』である。
自分の努力よりも地位が、自分のファッションセンスよりもトレンドが、鏡の前に立つ自分よりも画面の向こうの他人の目が、自らの存在を決定せしめている。
逆行する様に、俳優の真理は、テキストに活字として土葬されてしまった活字の奥、役という濡れ衣で埋没してしまったそのコンテクストの底に眠る、言葉の真実、人間の真実を突き止めることである。
キャラクターの人間性をより広く表現する表現力豊かな人間がよい俳優だと思われているならば、俳優も濡れ衣を着せられている。
そもそも、人間は人間性を表現せずとも、人間である。
纏った衣の底に埋もれる私自身は、何処に私を決定付けるのだろう。
少なくとも、私を私たらしめる確証は、纏った衣が与えてくれる者ではない。
他人の衣の中に幸福は見出せない。
私という人間は『人間』である。
舞台に登る彼は『人間』である。
テキストの活字は衣に埋もれている。
私たちの仕事はその中に、人間という生き物の『真実』を見つけることである。
駆け込み訴え
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演出 菊池亮太
原作 太宰治
俳優 大橋典生
アンカー 1
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